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旅コラム&旅情報
2018.06.07

上智大学とカンボジアのかかわり

上智大学は1979年にカンボジア難民救済募金を開始して以来、1980年代にアンコール遺跡国際調査団の派遣、1996年にカンボジアの文化復興と平和構築を目指した「上智大学アジア人材養成研究センター」を建設するなど、カンボジアとのかかわりを深めています。

アンコールワット

1992年より世界遺産に登録されたカンボジアのアンコール遺跡群

2018年の夏休みに出発するスタディーツアー「カンボジア遺跡保存・修復事業を学ぶ7日間」では「上智大学アジア人材養成研究センター」にご協力いただき、世界遺産「アンコール・ワット」の遺跡保存・修復現場へ、高校生の皆さんをお連れします。「上智大学アジア人材養成研究センター」ではどのような活動を行っているか、所長(元上智大学学長)を務める石澤良昭先生とはどのような方か、企画担当者が取材しました!

上智大学アジア人材養成研究センターとは

カンボジアにある上智大学アジア人材養成研究センター

「カンボジア人による、カンボジアのための、アンコール・ワット遺跡保存修復」の理念を掲げ、上智大学が1996年にカンボジア王国・シェムリアップ市に開設。世界遺産アンコール・ワットの現場で、カンボジア人石工や遺跡保存官など、遺跡の保存修復に携わる人材の育成に取り組んできました。
アジアの「隣人」のところへ出かけて行き、「仲間」として一緒になって奉仕活動をする。困っている人を見捨てない活動を26年にわたり続けてきたのが上智大学アジア人材養成研究センターです。

人材養成の拠点

上智大学アジア人材養成研究センターは、設立から20年あまり、カンボジアの皆さんが勇気と希望を取り戻すお手伝いをしています。具体的にはカンボジア人の自前発掘、自前修復、そして自国研究(クメール学研究)へ進む人材の養成などを行っています。

石澤良昭先生と母国で活躍するカンボジア人の教え子たち

石澤良昭先生と母国で活躍するカンボジア人の教え子たち

その結果、現在までに上智大学大学院でカンボジア人留学生18名が学位を取得しました(修士11名、博士7名)。1991年からは毎年夏季にバンテアイ・クデイ遺跡およびアンコール・ワット西参道で、プノンペン王立芸術大学学生の考古学・建築学研修も実施しています。

スタディツアーでできること!
上智大学アジア人材養成研究センター訪問日には、約800年前と同じ伝統技法で、カンボジア人石工さんが石材加工を公開し、実演!間近で見学できます。

アンコール遺跡国際調査団

「アンコール遺跡国際調査団」を組織しています。カンボジア王国政府アンコール地域遺跡保存整備機構と約20数年にわたり、遺跡の保存と修復、観光資源としての活用に共同で取り組み、現在に至っています。

アンコール・ワット西参道の修復現場

アンコール・ワット西参道の修復現場

主なプロジェクトは、以下の7つ。

  1. 人材養成(考古発掘、建築系、保存科学、地域のリーダー等)
  2. アンコール・ワット西参道の修復工事(建築技術の解明)
  3. アンコール王朝の考古・建築調査による歴史解明研究
  4. 文化遺産の修復を通じたアセアンの南・南協力の推進
  5. 文化遺産の啓蒙教育(小・中学生の遺跡修学旅行、住民啓発講座)と無形文化財の保存活動
  6. 環境保全とISO14001の推進
  7. 日本・カンボジアの次世代リーダーの養成と交流

国際交流の拠点

毎年夏季に、日本とカンボジア両国の学生交流として「緑陰講座」を実施しています。また、2014年度からは、「メコン文化遺産プロジェクト」のもと、東南アジア5カ国(タイ、ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジア)から遺跡の保護・修復に関わる担当者が集まり、文化財の修復・保存について、討論するワークショップも開催しています。

スタディツアーでできること!
修復工事のため2017年5月末より全面通行禁止になっているアンコール・ワットの西参道を見学します。アンコール・ワットの修復現場をご覧いただき、「国際協力とは何か」というみなさまの疑問に現場で実例をもってアジア人材養成研究センターがお応えいたします。

遺跡現場で交流

2011年バンテアイ・クデイ遺跡内に「アンコール文化遺産教育センター」を開設。この施設では、毎年夏季に近隣の小学生たちを対象に、発掘現場の見学や文化遺産を題材にしたスライド映写会などを開催し、アンコール・ワット遺跡に親しんでもらう活動をしています。

アンコール文化遺産教育センター 活動の様子

アンコール文化遺産教育センター 活動の様子

石澤良昭先生とカンボジア

石澤先生

上智大学アジア人材養成研究センター所長
石澤良昭先生

1937年 北海道帯広市生まれ
1961年 上智大学外国語学部フランス語学科卒業。パリ大学高等学術研究院にて古クメール語碑刻文字を研究。
1982年 上智大学外国語学部教授
2002年 上智大学アジア人材養成研究センター所長
2005年 上智大学長(第13代)
2006年 外務省・文部科学省共管「文化遺産国際協力コンソーシアム」会長。
専門は東南アジア史・文化遺産学研究。文学博士。
1998年 カンボジア前国王シハヌーク陛下からサハメトリ章大官位章の親授。
2007年 カンボジア国王シハモニ陛下からサハメトリ章大十字章の親授。

上智大学アジア人材養成研究センターの所長を務める石澤良昭先生がアンコール遺跡と出会ったのは、先生が大学4年生の時でした。当時の恩師がベトナムで行った講義を特別聴講した後、カンボジアへ教授の同行で立ち寄り、アンコール遺跡と出会いました。その歴史と美しさに魅了されて以来、石澤先生はカンボジアの歴史学、特に碑文学の研究に没頭するようになりました。

石澤先生がアンコール・ワットと出会ったのは1961年。石澤先生がまだ上智大学外国語学部フランス語学科の学生だったころ。

石澤先生がアンコール・ワットと出会ったのは1961年。石澤先生がまだ上智大学外国語学部フランス語学科の学生だったころ。

しかし、1970年3月にカンボジアでクーデターが起こります。ベトナム戦争がカンボジア国内まで拡大され、1973年以降はカンボジア人勢力同士による内戦が激化。カンボジアへの安全な渡航が厳しくなってしまいました。1975年4月から1979年1月までのクメール・ルージュの時期を経て、石澤先生がふたたびカンボジアの地を踏むことができたのは1980年7月末のこと。

ポルポト政権下、"粛清"に名を借りたクメール・ルージュによる虐殺が行われ、カンボジアで多くの方が亡くなりました。写真はキリング・フィールドにある柵にかけられた慰霊のブレスレット。

ポルポト政権下、"粛清"に名を借りたクメール・ルージュによる虐殺が行われ、カンボジアで多くの方が亡くなりました。写真はキリング・フィールドにある柵にかけられた慰霊のブレスレット。

石澤先生はこの時「上智大学アンコール遺跡国際調査団」を結成。まだ日本とは正式な国交が回復されていなかったカンボジアへ何度も出向いては調査を行い、アンコール遺跡や遺跡保存に携わっていたカンボジアの人々の現状を日本に発信しました。1989年5月、第1回ユネスコ調査団長としてアンコール遺跡の破壊状況を調査、ユネスコ、カンボジア政府、日本政府へ報告書を提出しています。

バンテアイ・クデイ遺跡における考古発掘実習

アンコール・ワット西参道修復現場の様子

石澤先生は人材養成こそがカンボジアにとっての喫緊の課題であるとし、1991年3月からはプノンペンの王立芸術大学における集中講義、そしてアンコール遺跡での現場研修を開始。1996年8月にはシェムリアップ市に「上智大学アンコール研修所(現 アジア人材養成研究センター)」を開設しました。

バンテアイ・クデイ遺跡における考古発掘実習

バンテアイ・クデイ遺跡における考古発掘実習

2001年には、バンテアイ・クデイ遺跡での考古学現場研修中に274体の仏像を発掘。学説を塗り替える世紀の大発見となりました。2007年11月に274体の仏像を展示する「シハヌーク・イオン博物館」を岡田卓也さん(イオン環境財団理事長)の援助により現地に建設、同時にアンコール・ワット西参道修復第一工区完成しました。現在も上智大学アジア人材養成研究センターの所長と、上智大学アンコール遺跡国際調査団の団長を両方を務めながら、カンボジアでのソフィア・ミッションを牽引しています。

ソフィア・ミッション
「他者のために、他者と共に生きる(Men and Women for Others, with Others)」を建学の精神に掲げる、上智大学による学生・教職員・関係者の国際奉仕活動。

スタディツアーでできること!
274体の仏像を展示する「シハヌーク・イオン博物館」と、仏像が発掘されたバンテアイ・クデイ遺跡を実際に訪問します。

高校生限定!上智大学 カンボジア遺跡保存・修復事業を学ぶ7日間

上智大学アジア人材研究センターの活動

上智大学アジア人材研究センターが全面協力!世界遺産「アンコール・ワット」の遺跡保存・修復現場へ、高校生の皆さんをお連れします。「世界遺産に行ってみたい!」 「遺跡研究の仕事について知りたい!」という意欲ある高校生の方は是非ご参加ください。今年の夏休みは「世界遺産を守る仕事」について学ぼう!

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